7月29日、松が丘Yuiの一緒に考える会 「在宅療養を支える医療・介護サービス」を開催しました
<在宅療養の勉強会 36名が参加>
日時:令和元年7月29日(月)14:00-16:00
場所:松が丘中央会館
企画:岩下清子
質疑対応:福来訪問看護ステーション(吉野愛生子、吉野透) 吾妻地域包括支援センター(城光寺文治、大倉みゆき)
参加者:松が丘の住民29名 市外から(松が丘住民の親族)1名 吾妻地域包括支援センターより3名 福来訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所より3名(計36名)
1.本日の会の趣旨
病院の入院期間が制限され、余儀なく自宅に帰らざるを得ない状況が広がっている。しかもその自宅とは、老々世帯、あるいはひとり暮らしであることが多い。健康上の問題を抱えていても、出来るだけ自立した生活を維持し、出来れば最期まで松が丘で安心して過ごしたい。その願いをかなえるため、在宅療養を支える在宅医療・福祉サービスの上手な活用の仕方について、訪問看護に焦点を当てて学び、考える。
<左から、岩下清子、福来訪問看護ステーション2名、吾妻地域包括支援センター2名>
2.訪問看護の概要
○要介護・要支援高齢者への訪問看護は、介護保険サービスの一つとしてケアプランに位置づけられ、実施される。介護保険の被保険者でない人、被保険者であっても要介護認定を受けていない高齢者は、医療保険で訪問看護を利用することができる。いずれの場合も、医師の訪問看護指示書に基き実施され、医師と訪問看護師の間で情報交換がなされる。
○訪問看護は、看護師が在宅療養をしている人の自宅に出向いて提供するサービスである。退院直後、長期にわたる療養生活で通院が困難になった人、最期を自宅で過ごしたい人などの在宅療養を支えている。
○訪問看護を実施しているのは、訪問看護ステーションと病院・診療所であるが、訪問看護の9割は訪問看護ステーションが担っている。訪問看護ステーションには、独立型、病院・診療所併設型、医療法人や社会福祉法人が複数の事業のうちの一つとして設置するものなど、多様な形がある。
○訪問看護利用の相談は訪問看護ステーション、かかりつけ医、入院あるいは通院している病院の主治医、病院の地域連携室、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどで。
3.参加者の質問、意見交換
○独立型の訪問看護ステーションの特徴と強みは
→利用者の主治医と情報交換しながら実施している点はどこも同じ。独立型であっても、緊急時365日・24時間の対応も可能。強みと言えば、医療機関の利害をはなれ、公平性を保ちやすいこと。なお独立型の場合、多数の医療機関の医師から出されている訪問看護指示書をもとに実施している。(福来訪問看護ステーション)
○一人暮らしをしているが、地域包括支援センターの紹介で緊急通報システム(市の福祉サービス)を利用している。緊急時は市が委託している民間事業者のオペレーションセンターにつながり、看護師による電話での対応があるが、民間事業者は遠方である。近くの訪問看護ステーションにつながるのであれば安心なのだが。
→訪問看護の利用者であれば、緊急時365日24時間の対応は可能。しかし、訪問看護は医師の指示書が前提なので、緊急通報システム利用者への対応は不可能。(訪問看護ステーション)
○緊急通報システムの在り方を変えることは出来ないのか。
→行政ができることは縮小しているご時世。緊急通報システム貸与事業自体が縮小傾向。市民が声を上げてください。(吾妻地域包括支援センター)
○福来訪問看護ステーションは、末期がんの人が家で暮らしたいと希望している場合、看取りまで支援しているか。一人暮らしでも可能か。
→可能。すでにやっている。
(注:福来訪問看護ステーションの支援を得て、家で妻の看取りをした方と、親の看取りをした方が出席)
○通院が困難になった場合、通院回数を減らして、月1回ぐらい訪問看護師に来てもらい健康チェックをしてもらうことは可能か。
→それは制度の趣旨に合わないと思う。(地域包括支援センター)
→そのようなケースはあまりない。(訪問看護ステーション)
○自分が勤務している板橋区の訪問看護ステーションでは、そのようなケースは少なくない。訪問介護だけでは健康状態の把握が難しいので、回数は少なくても訪問看護をケアプランに入れ、訪問看護師とヘルパーが情報共有し、連携して対応する。訪問看護の料金は、訪問介護より高いため、訪問看護の回数は少なくする。(市外からの参加者)
○訪問看護は医師の指示書が必要であるということは、医師受診が前提なのか。
→そのとおり。(訪問看護ステーション)
○どこの医師に訪問看護指示書を出してもらえばいいのか。
→普段受診している医師(かかりつけ医)。退院後訪問看護を導入する場合は、病院の主治医。退院前に主治医が訪問指示書を交付し、それを持って退院するケースもある。訪問看護ステーションが在宅医療に理解のある診療所を紹介し、訪問看護ステーションから訪問看護指示書の交付を依頼することもある。(訪問看護ステーション)
→受診している医師に指示書を出してもらえるか聞いてみてはどうか。(地域包括支援センター)
○そのようなことをして医師は怒らないか。
→怒るかどうかは別として、訪問看護というサービスを知らない医師がいるのも現実。地域包括支援センターとしても、訪問看護指示書を出してもらえそうな診療所の紹介はする。(地域包括支援センター)
○要介護の認定を受けている場合、訪問看護サービス利用の相談・利用申し込みはケアマネジャーにすればいいのか。
→その通り。ただしケアマネジャーによっては、医療系のサービスに疎い人もいる。それ故、先に訪問看護ステーションに相談し、訪問看護ステーションの方からケアマネジャーに話をしてもらうのもいいだろう。( 地域包括支援センター)
○ケアマネジャーは何をする人なのか。地域包括支援センターの相談員とはどう違うのか。
→ケアマネジャーと相談員は所属が異なる。ケアマネジャーは居宅介護支援事業所(「ところの苑」にも併設されている)に所属し、介護保険サービス利用者一人ひとりの、サービス利用にかかわるマネジメントを行っている。地域包括支援センターは市の事業であり、社会福祉法人等に委託する形で実施されている。吾妻地域包括支援センターは「ところの苑」が委託を受け、事務所は「ところの苑」の中にある。
介護保険サービス利用者には、担当のケアマネジャーがいるはずなので、介護保険サービスの利用に関しては、そのケアマネジャーに相談すればいい。まだ要介護認定を受けていない人が要介護認定の受け方やサービス利用について相談したいなら、地域包括支援センターの相談員。
地域包括支援センターは、介護保険サービスに限らず幅広く相談に応じている。その人の困りごとを聞いたうえで、もっと専門的に対応できる機関や人を紹介することもある。いわば、相談の入口と考えていい。(地域包括支援センター)
○肺炎による入院を契機に認知障害がではじめた人がいる。退院後に認知障害が進み、介護している高齢の妻が疲弊している。要介護認定を受け、デイサービスを週1回利用しているが、医療には繋がっていない。今後の対応策を考える上で、まず認知症外来の受診が必要ではないかと思うが、本人は受診拒否。こういう場合、どこに相談すればいいのか。
→地域包括支援センターでも認知症外来の受診に関する相談対応はしている。
4.企画者の総括―今後に向けて
かつて自宅で死亡することが普通である時代があったが、2009年には死亡場所の8割強が医療機関となった。治療法の選択から最期の迎え方まで、療養生活全般を病院や医療の専門家にお任せすることが当たり前と考える時代を、私たちは生きて来た。そして今になって余儀なく自宅で療養せざるを得ない状況が広がっている。
2000年に介護保険制度がスタートし、介護保険サービスの一つとして訪問看護が位置づけられた。この時期欧米では、既に訪問看護は長い歴史を重ね、ポピュラーなサービスとなっていた。2004,5年のデータを見ると、人口当たりの地域で働く看護師(訪問看護師、保健師など)数は、欧米は日本の3~10倍である。
この時期、欧米の病院在院日数は日本よりずっと短く、在宅死亡率は日本よりずっと高かった。子供との同居率は日本の1/10~1/3で、高齢者単独世帯の比率は日本の2倍以上であった。日本は今、欧米と同じ方向に急速に向かっていると思われる。しかし、それに見合う在宅療養を支える医療・福祉サービス体制は、まだまだ整っていない。
私たち一般市民に今できることは、こうした現実を踏まえ、在宅療養を支える医療・福祉サービスに関心を向け、理解し、適切に利用することによって、人生の最終章をより穏やかに生きること。そのために、私たちの近くにいる在宅医療・福祉サービス従事者と対話を重ねたい。そうしたことが在宅医療・福祉サービスの拡充、そして松が丘がそれらのサービスを利用しやすい街になることにつながるのではないかと考えている。今回をその第一歩とし、引き続き対話を重ねたい。
松が丘Yui 共同代表 小林義一・岩本哲夫